他人に理解されなくとも。
誰でも無い、お前と解り合えた。
そのコトにこそ、意味がある。



例えソレが、端から見たら酷いと形容されるコトであろうとも。


「最近、退屈だよな」
「何、急に?」
「別に…、コレと言って刺激のない毎日だなって」
「平穏な日々こそ貴重なモノだよ」
「それにしたってな…」

人気(ひとけ)の無い空き教室。
自分と国信以外は誰も居ない場所。
ボヤキながら、窓の外へと視線を移す。
今日は雲一つ無い快晴で、日の光が暖かく心地良い。
午後の授業は、さぞかし睡眠学習をするのに最適だろう。

「ちょっと遊びたいよな」

そんなコトを思いながら、ポツリと無意識の内に呟く。

「遊ぶって…。アレ?」

遊びたい。
と、呟いただけの俺に、皆まで言わず何を指しているのか解っているらしく。
その事実がとても心地良い。

「他に無いだろ?」
「確かに愉しいけどね…。でも、具体的にはどうするわけ?」
「アイツも突けば簡単に嵌るだろ?」
「うわー、人でなし」

そう言って国信は、楽しそうに笑う。

「噂をすれば、だぜ」

タイミング良く、丁度向かいの廊下辺りに、渦中の人物の姿を見留め、顎で軽くそちらを指す。

「ホントだ。けどこんな所で何してるんだろうね?」
「それは俺達だって同じだろ」
「まあね…。ああ、案外三村のコト探してフラフラしてるのかな?」

相変わらず楽しそうに笑いながら言うと、国信はその人物へと視線を向ける。
さて、どうしたモノか。
思いながら、暫くお互いその様を無言で眺る。

「手っ取り早い手段といったら、やっぱコレだろ?」

頭を過った考えに、口元に笑みが浮かぶ。
何?
と、コチラを振り返った国信の腕を引き寄せれば、たいした抵抗もなくその身体はすんなり俺の方へと収まった。
そして唇を重ねる。
瞬間、驚いたように国信の目が見開かれる。
が、スグに先ほど同様に笑みへと変わり、背中へと腕が回された。
それを合図にしたように、角度を変え何度も繰り返す。
まるで誰かに見せ付けるようにして。
否、実際そうしているのだ。
あの窓の向こうに居る人物へ。
そいつが気付かなければ、意味が無い。

キスをする時。
自分達は、瞳を閉じるコトをしない。
今現在もそれは同じで。
チラリと横目で窓の方を見、国信の首筋辺りに掛けていた手を離し、カーテンへと伸ばす。
そして、大袈裟にカーテンを閉めれば、振動と風でひらひらと揺れ動く。
名残惜しみながらも唇を離し、その合間から、もう一度外を伺う。
が、その場所には、先ほどまであった飯島の姿は無かった。
教室へ戻ったか、或は―――。

「ココまで来るかな?」
「どうだろうな。でも、折角なんだし、来てもらわないとな」
「まあ、上手くいったんじゃない?」

それだけ言うと、国信は窓辺を離れ、空いている机へと腰掛けた。
倣うように、身体を反転させ窓枠に寄り掛かり、俺も室内へと視線を戻す。

「この後、どうするの?」
「そうだな…。さっきと同じコトでもしたら効果有るんじゃないか?」
「ふふ、多分ね。けどさ、三村も酷い人だよね。友情とも愛情とも判別し難い、感情抱いてる相手に」
「お前だって、人のコトとやかく言えないだろ?」
「まあね」

さして気にも留めた様子もなく、笑みを浮かべたまま。
寧ろその様は、今からしようとするコトに乗り気だというのがよく解る。
俺がそうなのだから、当然と言えば当然だろう。
そうして笑みを濃くすると、両腕を広げ、俺の方へと差し伸べてきた。
応えるように近寄れば、そのまま俺の首へと腕を回し、ぐいっと引き寄せられる。

「愉しコトは、好きだしね」

唇が重なる瞬間。
そう呟いた国信に俺も笑みを浮かべ、再び唇を重ね合わせた。

先程よりも深く、歯列を割り舌を入れ絡ませながら、国信が寄り掛かっていた机の上へと押し倒す。
そのまま、角度を変え何度も口腔を貪るように犯す。
合間に、国信の口からは、意図したかのような甘い声が洩れる。
その行為に没頭するような、酔いしれていると。
カタン、と僅かな音がし、走り去って行く足音が耳に届く。
遠ざかって行く足音を聞きながら、唇を離せば、ツーっと銀糸が引いた。

「随分アッサリ、上手く行くよね」
「相手が相手だからな」

軽口を叩きながら、覆い被さるようにしていた身を起こし、腕を取り国信の身体も引き起こす。
僅かに着崩れた制服を整えながら、国信が口を開く。

「で、今後どうすると思う?」
「まあ、何かしら行動起こすんじゃないか?」
「そうして貰わなきゃ意味無いんわけだしね」
「ま、そうなるように仕向けたんだけどな。しっかしアイツも、なんつーか単純だよな…」
「当然の結果だと思うけど。大体、物凄く苦悩してる状態なわけだろ?誰かさんの所為で」

呆れたような、溜息を吐きながら国信がそう口にする。
苦悩、ね…。
確かに、アイツは元々後ろ向きだし、なんでもかんでもスグため込むような人間だ。
けど、そんなのは俺の知ったコトじゃない。
それに大体、今の現状を作り出したのはアイツだし、自業自得だろ?

「俺とお前、どっちに行くだろうな?」
「うーん?俺の方じゃない」
「じゃあ賭けてみるか」
「賭け?」
「俺の方ならアイツの勝ち。副賞として、あのコト含めて全部チャラにしてやる。
けどお前の方に行ったらアイツの負け。とりあえず当面は現状維持ってとこか?」
「あはは、それって賭けになってなくない?」
「そうか?」
「そうだよ。大体アレだけされて三村の方へ行く確率、物凄く低いと思うし」
「まあ、そう簡単に勝って貰っちゃつまらないしな」
「人でなし」
「お互い様だろ?大体、俺をこんな風にしたのは、誰でもないお前だろ?」
「まあね。けど俺は大っぴらに愉しんでなんか無かったよ?でもまあ、あの泣きそうな表情とか堪らないモノあるし。
ちょっかい出したくなる気持ちはよく解るけど」

言って、恍惚したような表情をする。
その姿に、僅かに眉間に皺が寄る。

「…あんま、そんな表情(かお)すんなよ」
「何が?」
「だから…。俺以外の相手で、そんな表情(かお)すんなって」
「妬けるから?」
「…ああ」
「ふふ、光栄だね。よっぽど愛されてるんだ、俺って?」
「当たり前だろ?お前にあんな表情(かお)させるのも、満足させられるのも俺だけだ」
「凄い自信」
「当然だろ。それと同時に逆も、然り。だ」
「まあね。解ってるじゃない。ならそんなに心配しなくとも、俺を満足させられるのも、満足出来るのは三村だけなんだからさ」
「んなコト解ってる。けどな、あんな表情(かお)して言われたら、確認したくなる」

顔を歪めそう言う俺に、可愛い所あるよね。と、満面の笑みを浮かべながら国信が告げる。
可愛いのは、お前の方だ。
と、思ったが、口にしたら殴られそうなので心の中に留めて置く。
そうして話しも纏まったコトだし。国信の制服へと手を伸ばす。

「って、何この手は?」
「続き」
「授業始まるよ?」
「サボっても平気だろ」
「三村は兎も角、俺は真面目な優等生なんだけど」
「どういう意味だよ」
「言葉通り」
「…ったく、なら尚更構わないだろ。具合悪くして保健室でも行ったと思うさ」
「勝手な理屈だなあ」
「今更だろ?それに大体な、規則は破るモノだろ?」
「うわー、超自己中」
「超とか言うなよ。似合わないし気色悪い」
「失礼だな。そんなコト言うのはこの口か?」

言うが早いか、両手で口の端を引っ張られる。

「ッ?!…痛いな、引っ張ンなよ」
「ふふ、そんな口聞くからだよ」

力いっぱい引っ張られたわけではないから、たいして痛くもない頬を摩りながら、恨みがましい視線を国信へと向ければ。

「そんな所含めて好きだけど」

言って国信の、ほんのり冷たい掌が俺の頬へと触れる。

「それじゃあ、俺を満足させてみて下さい」
「言われなくとも」

悪戯っぽい笑みを浮かべ、そう続けられた言葉に、頬を触れている国信の掌を握り締め答える。
そうしてお互い顔を見、笑い合い、本日何度目になるか解らない口付けを交す。






「愉しくなりそうだな」





制服の隙間から、手を素肌へと滑らせながらそう呟いた。


















fin.



人でなしな人達です。
こうゆうのも、結構書くのは楽しいですよね…。
この話しの経緯と言いますか、こんなコト書くと、また引かれると思うのですが。
名前は出てきてませんが、ターゲットにされてるのは飯島です。いい加減、飯島ファンに刺されますね(汗)
飯島目当てでウチへ来て下さる方はいないと思いますけども。カッコイイ飯島好きーの皆様には、大変申し訳ないです…。
でも既に、こんなイメージで固まってしまってるので修正は難しいです。はい。
三村の言う、あのコト〜…。ってのは原作の所謂例の一件です。
で、まあ遊びと言う名の本番へと続くわけです。この時点で、引いた方は御覧になりませんように…。

04.03.03
05.08.11改










SM話しっぽくても、引かない!!という強者の方はドウゾ。





↓以下反転

真のマゾヒストはサディストであり、真のサディストはマゾヒストである。
と、いうような思いがありまして(滅)
ちなみに肉体的Mで精神的Sと、肉体的Sで精神的Mって方向で!!(滅殺)
それを三国の二人に当てはめると、前者が慶時さんで、後者が三村。
そんな二人なので、お互いだけでホントは満足してるんだけども、嗜虐心を煽られる飯島にちょっかい出したくなる。みたいな。
うん、彼(飯島)はね多分、天然でそんな虐めてオーラ出してる人なんだ…(あくまでウチでの扱い)
だからね、二人はそんな飯島見るのが楽しいの。分かち合ってるモノ、はその辺りのコトなんですよ。
てか、虐めっ子二人と、運悪く餌食にされた虐められッ子の話しみたいだな…(みたいじゃなくて、その通りなんだよ)
と、まあそんな感じです。
なんかもう、ホントに色々スミマセン…。