『だって俺は悪くない』
誰だって、自分が楽しいコトや気持ち良い、気分の良いコトは好きだと思う。
『快楽主義』とでも言うのかな?
自分の性癖が、少しオカシイと気付いたのはいつだったか。
正直俺は、痛いとか苦しいとか。
そういった感覚が好きらしい。
俗に言う『マゾヒスト』ってやつなのだと思う。
身体的に、そういったコトをされるのは好きだけど。
例えば誰か、その相手にとってコンプレックスとか隠し通しておきたい、触れて欲しくないような類の話し。
そういうのをして、相手の顔が歪んだり、泣きそうになる表情を見るコトも、実は密に好きだったりもする。
だから『サディスト』でもあるのかな?
まあ、そんな細かいコトはどうだって良いんだけど。
この事実に気付いたのは、三村と付き合うようになってからだと思う。
俺の言葉や態度に、一喜一憂する様。
それは見ていて、とても心地良いモノだった。
けれど逆に、不満を感じるコトもあった。
三村はとても優しくて、気遣いというか、気を使う人間だった。
そう、ホントは俺なんかよりもずっと。
普段の態度の所為なのか、周りの人間はそのコトには殆ど気付いていない。
そんな相手に対して、何が不満なのか。
そもそも不満を感じるコト自体が罰当たりなのかもしれない。
彼は、セックスでも優しかった。
まるでそれは、壊れ物か何かを扱うような。
始めの内は、まだ良かった。けれど数を重ねる毎に不満になっていった。
唯一、それだけが気に入らなかった。
解消するには、三村に変わってもらう他無い。
相手を変えてしまう。
という方法もあったけれど、それ以外は満足していたわけだし。
何より手っ取り早い。
それに三村に対しては、何処か自分と似たモノを感じていた。
だから少し突けば、同じようになると、根拠もないのに確信していた。
そうして暫く。
俺が思い描いていた通りに三村はなってくれた。
何もかも理想通りになり、悦びを覚えている。
で、結局何が言いたいのかというと。
三村が今のようになったのは、元を正せば俺の所為かもしれない。
けど、元々そういった所を持ち合わせていたわけだし。
だから俺がしたコトは、きっかけにしかならないと思うんだ。
そうして今、三村が取ってる行動、気持ち。
俺には手に取るように、凄くよく解る。俺も三村と同じだしね。
しかも、こうなる直接の原因を作ったのはそっちでしょ?
それにね、何をしなくても、無意識にそんなオーラを出してるんだよ?
気付いてないだろうけど。
悩めば悩むほど。
行動すればするほど、嗜虐心を煽ってるんだよ?
だから―…
俺は何も悪くない。
そう、悪いのは全部
「飯島の方なんだよ?」
fin.
04.03.01
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