『規則は破る為にある』
午後の授業を告げるチャイムが鳴る。
けれどそんなもの、今は聞こえはしない。
静かな室内に響くのは、艶めいた甘い声。
机の上に組み敷き、上着を床へと投げ、露になった肌へ手を滑らせ、舌を絡ませ深く口付ける。
「…ふ」
くぐもった声が洩れ、唇を離すと銀糸が伝う。
そうして、肌を愛撫していた手を、白く細いその首へと伸ばし、そっと撫で上げる。
トクトクと血脈が巡り、温かく、生きているというコトが解る。
それを感じながら、ゆるく少しずつ手に力を込める。
「あッ」
小さく、吐息にも似た声。
そうして更に力を加えると、恍惚とした微笑を国信が浮かべる。
その姿に、ニッと口角が上がる。
次第に手の力を抜き、再び唇を合わせると、ゆるゆると腕が伸ばされ、背に回された。
舌を絡ませ、吐息までも奪うよう深く口付ける。
国信が乞い、望んだ行為は、当初酷く俺を困惑させた。
躊躇いがちに及んだ行為だったが、浮かべたその表情は、酷く鮮やかに美しく、とても扇情的なモノだった。
自分がさせているのだ、という悦びと、自分以外に知る者がいないという優越感。
歪んだ、屈折にも似た感情を俺に沸き起こさせた。
俺を満たすのも、国信を満たせるのも、己以外には存在しない。
そんな想いが交錯する国信との情事。
危うさの中にこそ存在する悦楽は、一度知ってしまったら、忘れるコトが出来ず、麻薬のように癖になり、甘く痺れる。
こうして、お互いの欲望を満たしあう為、離せず離れられない関係が、行為が今日も続く。
fin.
04.06.30
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