「南くん、7月3日が誕生日なの?」

「ん? そうだけど」

「ふーん…、波の日が南くんの誕生日」

「…それって」

「7月3日より、3月7日の方がぴったりなのに」

「やっぱり、それ散々言われ続けたぞ」

「でも、南だと。3月73日か、37月3日の方が良いよね」

「否、そんな日ないだろう」

「そうだけど、でも絶対に忘れないね!!」

いつだったか、そんな話しをとした。
そう言って笑うに、誕生日を祝って貰えるのだろうかと期待してしまうのは、当然のコトだと思う。











「南くん、はいコレ」

「何だ?」

「今日お誕生日でしょう? だからプレゼント、受け取ってもらえる?」

「え?! マジで」

「うん」

「あ、有り難うな。開けても良いかな?」

「どうぞ~」

ドキドキと震える指先で、キレイにラッピングされた包みを丁寧に剥がしていく。
そうして出てきた物は―――。
胃薬だった。

「南くんに、ぴったりだと思われるモノを選んでみました!! どう?」

「え? あー…、や……うん?」

が選んでくれた贈り物は何だろう。
あの胸の高鳴りを返して欲しい、それが正直な所だった。
でも、目の前に満面の笑みを浮かべたの姿を見ていると、無下にするわけにもいかず。

「あ、有り難う。嬉しいよ」

何とか笑みを浮かべ、そう返した。
するとは、ジッと俺の顔を見つめてきた。
その視線に若干、目が泳ぐ。

「南くん、本当に嬉しい?」

「あ、ああ」

「ホントの本当に?」

「…ああ」

「そっか、じゃあコッチはいらないね」

「……は?」

「ホントはコッチが本当のプレゼントだったんだけど、南くんそれ嬉しいんでしょう?」

の言葉に、俺は呆然とした。
そんな俺を見つめ、は対照的に、イタズラが成功した様な嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

「なーんてね!! うそ嘘、冗談だよ。はい、コレ。ふふ、ビックリした?」

「ああ、凄く」

「意表をついてみようと思ったのに、南くん嬉しいとか言うんだもん。やっぱり南くんは、優しい人だね」

「え、いや別に、そんなコトは…」

「南くん、誕生日おめでとう!!」

笑顔と共に告げられた言葉だけど、本当は充分嬉しかった。
さすがにそれは、には言えない。

「ありがとう」

その変わり、出来る限りの想いを込めて、笑顔と共に返した。






2010.07.03 加筆修正