「うちの学校、球技大会とか多いよね…」

溜め息混じりに、隣のが零した。

「まあ、スポーツに力入れてるわけだしな」

「それにしたって、体育祭を含めて三回もあるんだよ!?
この時期が近付くと憂鬱だな。台風上陸とか、天変地異に見舞われるとかならないかなぁ…」

「否、普通に無理があるだろう」

台風は兎も角としても、天変地異はさすがに無理があるだろう。
まあ、自身もそれは解ってて言ってるのだろうが。

「南くんは、スポーツ全般得意だもんね。私は苦手、特に球技!!」

「あー…、そういえば、さっきバレーボールがぶつかってたな」

「見てたの?!」

「ああ、偶然だけど」

「うわー…」

気まずそうに、が顔を顰めた。

「その少し前はバスケットボールがぶるかるし、コレはきっと、ボールがぶつかる呪いがかかってるんだよ」

「何だ、それ」

真剣な面持ちで告げられ、思わず吹き出しそうになるが、何とか堪える。
その変わり、誤魔化す様に苦笑を浮かべる。

「バレーは、サーブ打ってもネット越える率が低いし。
バスケもドリブルとか苦手だから、すぐパスしちゃうんだよね。
そうすると軽く睨まれたりさ。こういう小さなコトが積もって段々、好きじゃなくなっていくんだよね。
下手は下手なりに頑張ってるつもりなのに。でも、つもりじゃダメなんだよね。結局、結果が全てだし」

そう言うとは、はあーッと大きな溜息を吐いた。

「制服もさ、白って汚れが目立つし、膨張色だから微妙だよね」

「…何だか随分、不満が多いみたいだな。ならどうして山吹を選んだんだ?」

「そんなの、家から近いからだよ」

「……それだけ?」

「うん」

「…何か、凄くらしいな」

「どういう意味? 南くん私のコト、バカにしてるでしょう?」

「え、いや。そんなつもりはないぞ、うん」

「ホントかなぁ…、怪しい」

ジトッとした目を向けられ、焦る。
バカになんかしていないし、そういう所がらしくて微笑ましいとは思うが。
しかし、さしがにそんなコトは口に出来ない。

「あーあ、高校は外部受験しようかな」

「え?!」

どうしたモノかと思っていると、突然はそんな言葉を洩らした。
何を言い出すんだは。
俺か? 俺の所為なのか?! そんなコトを言い出すのは!!!
というか、この時期に進路変更するのか?!
それは、無いだろう。
…否、無くは無いか。
だがしかし、何の疑いもなく、高校も一緒だと思っていた。
それだけに、衝撃は大きい。

「…でも、そうなるとまた受験しないといけないんだよね。一応、山吹は大学までエスカレーターなわけだし」

続けられたの言葉に。
不謹慎ではあると思いつつ、そうだ、考え直してくれと思わずにはいられなかった。

「まあ、体育祭とか以外は普通だしね。
それに山吹に来なかったら、南くんにも会えなかったわけだし…」

「…え?」

「山吹に入って良かったコトは、南くんと知り合えたコトだしね!!」

「ッ?!」

満面の笑みを浮かべ、が言う。
ああ、もう!!
何だっては、こういうコトを普通にサラッと言うんだ!!!
こうしたの物言いには、多少成れてきたつもりだったが。
やはり、面と向かって言われると、その破壊力は計り知れないモノがある。
頬が、じんわりと熱くなってしまうのは、仕方ない。
照れくさいとか、恥ずかしい気もするが。
俺も少しくらいは、に気持ちを打ち明けるべきなのかもしれない。

「…俺も、と知り合えて良かったよ」

ポツリと今の俺には、それだけ言うのが精一杯だった。
俺の言葉に、は驚いた表情を浮かべ。スグに、嬉しそうな笑顔を向けてくれた。
そんなに、俺も笑みを返した。







2010.05.08 加筆修正