「南くんは、優しいよね」

突然、クラスメイトであるに言われた。
その言葉に、どう返せば良いのか解らず困る。

「優しい人だよね」

もう一度、しみじみと繰り返された言葉。

「えっと…、そう、かな…?」

結局、何の捻りもなく、そう返すのがやっとだった。

「うん、そうだよ」

「そうか、自分じゃ解らないけどな…」

が言うなら、そうなのかもしれない。なんて思ってみたり。

「自分で『私は優しい人間です』なんて自己申告するような人は、作り物めいた感じがするから
無自覚で無意識に出来る南くんは、本当に優しい人間だと思うよ」

「…そんなコト言われたの、初めてだな」

面と向かって、しかもココまでストレートに言われると少し…否、かなり照れくさい。
正直、顔が熱くなって思わず頬に手を当てる。

「そうなの? でも本当のコトだし。…南くんは彼女とかいるの?」

「えッ?! な、何だ急に…?」

の突然な質問に、思いの他大きな声が出てしまった。
何を言い出すのだろうか。
の真意が解らず、如何したモノかと悩む。
否、普通に彼女などいないわけだから、そのまま告げれば良いだけの話しなのだろうが。

「深い意味は特にないけど、南くんの彼女は心配事が尽きなさそうな気がするなって思ったから」

「…え?」

「あ、別に変な意味じゃなくて!! さっきも言ったけど、南くんは優しいから」

「?」

「ええと…、誰に対しても優しいから『どうして他の子達にまで優しくするの!!』
とか言われたりしないかなって。
彼女なわけだし、自分だけが特別であって欲しいって思うんじゃないかなと」

余計なお世話だと思うけど、とは付けたし、困ったように笑った。
自分で自分のコトを、そんな風に思ったコトはないし。
に言われるまで考えたコトもなかった。

「…そういう、ものなのか?」

「うーん…、私もよくは解らないけど…。一般的には、そういうものじゃないかな?」

は首を傾げながら、そう答えた。

も?」

「え?」

も、そう思うのか?」

無意識に、そんな質問をしていた。

「私? 私はー…。どうだろう、好きな人も彼氏もいないし」

「…そうか」

の言葉に、何故だかほっとした。

「でも…」

「うん?」

「人を選んで優しくするとかしないとか、そういうのは違うと思うし。
誰に対しても、そんな風に出来るのが南くんの良い所で魅力だから。誇りに思うんじゃないかな?
それでも、たまにはちょっと妬いちゃうかもしれないけど」

「ッ?!」

サラリとは、俺に爆弾を投下した。
当然の如く、笑顔で告げる彼女にときめいたのは、には秘密だ。






2010.04 加筆修正