クラス替えで、初めて同じクラスになった。その人は、南健太郎くんという。
そんな南くんは、とても優しい人だと私は思う。
ただのクラスメイトに過ぎず、殆ど話したコトない私に対しても親切にしてくれた。
例えば、私が日直の時。
持ちきれない程の荷物を運んでいたら、南くんは日直でもないのに、
「手伝うよ」と言って、殆どの荷物を持ってくれた。
こんな風に、さらりと行動を起こせる男子は、なかなか居ないと思う。
頼めば渋々ながらも、手伝ってくれる人は多いだろうけど。
自ら声を掛けてくれる様な人は、早々いないというか。
寧ろそっちの方が、普通なんだろうな。と何処かで思っている節もあるけれど。
まあ、それはさておき。
他にも、背の届かない高い場所にある物を取ってくれたりもした。
授業中に、うっかり居眠りをしてしまった時は、
「しょうがないな」なんて言いながらも、ノートを貸してくれたりする。
同じ部活の千石くんが、教科書を忘れて借りにきたりすると「ったく、お前はまたか…」
呆れた口調で、ぶつぶつ文句を言いながらも貸してあげて。

こうした行動が、とても自然だった。
それはまるで、そうするコトが、当たり前のように。
人間が、誰か他人に親切にするのは、何かしらの裏があったり、見返りを求めたり。
相手に好感を持たれたいとか、そういうモノが大なり小なり含まれていると私は思っている。
皆が皆、そうとは限らないし思ってはいないけれど。
友人が手伝ってくれた場合等は、また変わってくる。
時には、見返りを要求されるコトもあるが。
この場合重要なのは、顔見知りであっても殆ど接点のない相手。
というのがポイントだ。
本当に困っているから、手を貸してくれる。
裏表とか無い人なんだろうな、と南くんを見ていると思う。

南くんは、テニス部の部長を務めていて。
忙しくて大変だと思うのに日直の仕事や、掃除もサボるコトなくきちんとこなして。
責任感も強い人なんだろうなと思う。
南くんの良い所は、まだまだ沢山あるけれど。
それは、またの機会にするとして。
こんな感じで、南くんは男女問わず誰に対しても平等に優しく親切だ。
それはもう、頼まれたら断れないレベルな、いい人。
あとちょっと、押しにも弱いと思う。
滅多に怒るコトもなくて、穏やかだから余計に頼み事とかをしやすいのかもしれない。
確か、弟がいるらしいから。察するに典型的な長男気質で、放っておけないのかもしれない。

「ありがとう」とお礼を述べると。
南くんは少し照れたように、眉を下げて微笑みを浮かべる。
独特な雰囲気のある、その表情は。
心にぽっと灯りが燈るような、温かな気持ちに私をさせてくれた。
その笑みは、人柄が現れてるんだろうなと思う。

そんな私と南くんは、ただのクラスメイト。
だから私が、こんな風に思うのは筋違いで、余計なお世話・お節介だと思っている。
思っているけど、それでも私は思わずにはいられない。
もしも南くんに好きな人が出来た時
(もしかすると、既にいるかもしれないけど。私は知らないから、詳しくは何とも言えない)
誰にでも優しいから「南くんて、いい人ね」
なんて言われて、それ以上の仲に進展しないのではないか?
もし、そうなら切な過ぎる。
出来れば南くんには、哀しそうな表情をして欲しくないし、倖せになって欲しい。

他にも、悪い人に騙されたりしないだろうか?とか。
そんな心配もしてしまう。
否、さすがにそこまで子供じゃないんだから、無いだろうと思いつつも。
オレオレ詐欺とか、騙されたりしそうな気もする。
本当に、私がこんなコトを思うのは間違いかもしれないけど。
それでも思わずには、考えずにはいられない。
優しくて、いい人。とっても優しくて親切。
温かな気持ちにさせてくれる南くんが、心配でならないです。






2010.04 加筆修正