5月中旬〜6月6日



『第一印象』(財前編)



クールだとか、カッコイイとか。
きっと、彼を見た人の多くは、そんな印象を持っているのではないかと思う。
けれど私の彼に対する第一印象は、カワイイだ。
誰が何と言おうと、コレは譲れない。
初めて彼、財前くんを見掛けたのはいつだったか。
詳しい日時までは覚えていないけれど。
それは、コンビニだった。
何だか甘い物が食べたくて、いろいろと物色していた時。
ふっと隣に影が差し、誰か人がきたんだなと条件反射的に顔を向けた。
目に付いたのは、まず学ラン。同年代かな?と、次いで耳朶のピアス。
全て違う色のピアスに、お洒落さんなんだなーと思った。
耳にはイヤホンを付けて、音楽を聴いている風だった。
そんな彼が、何を買うのかと興味が沸き、こっそり見ていると。
迷い無く、ぜんざいを手にした。
瞬間、それまで無表情だった顔が嬉しそうな。笑みを浮かべた。
ほんの一瞬の出来事で、スグに元の無表情に戻ってしまったけれど。
恐らく好物なのであろう、ぜんざい。
それを目の前に、顔が緩んでしまうなんて。
カワイイ以外の、何物でもないだろう。
それは多分、表情にあまり出ないであろう人物が、無意識に浮かべてしまった隙の様な。
ギャップの所為も、あるのかもしれない。
何となく私も、同じ様にぜんざいを購入したのだ。
そうして、一方的な再会を果たしたのは、委員会でのコト。
実際の財前くんは、何ともダルそうな雰囲気を纏い。
口を開けば、皮肉めいたキツイと取られそうな言葉が飛び出す。
可愛げなどと言うモノは、何処にも無い様な子だ。
けれど、好きなぜんざいを目の前にして、嬉しそうに顔を綻ばせてしまう。
それを知っている私には、どんな風でも、嫌味めいた言葉を耳にしても可愛く見えてしまう。
勿論、本人には秘密だけれど。







『第一印象』(謙也編)



走れメロス。
彼は私に、この本を連想させる。
初めて会ったというのか、見掛けたというべきか。
兎に角、ファーストコンタクト時は、まるで一陣の風が吹き抜けて行った様な。
そんな感じだった。
たまたまなのか、私が忍足くんを目にする時。いつも走っているような気がする。
別段、性格が短気であるとか、せっかちな訳でもないと思うが。
でもまあ、忍足くんの行動は基本的に素早い。
それはまるで、あの魚みたいな。
動くのを止めたら、死んでしまう!!的な感覚に似てるのかもしれない。
浪速のスピードスター、なんて異名まであるくらいだ。
スピードに関してはきっと、誇りというか拘りがあるのだろう。
だけど、足が速いのは解る。
食べるコトまで早いというのは、どう関係してくるのか。
何事に措いても、速さに重点を置いているからこその技なのか。
しかし早食いは、あまり身体にも良くないし。
そこは若干、ゆっくりした方が良いんじゃないかなと思う。
後は、ノートを取るのも早いのだろうか?なんて疑問が過ったりする。
高速で書かれる文字は、果たして読めるモノなのか。
実際、その姿を目にしたコトはないし、ノートも見たコトがない為、真実の程は解らないけれど。
唯、ペン回しは凄まじく早かった。
アレが飛んできたら、とてつもなく痛そうで、深く突き刺さるのではないか?
なんて危惧するくらいに。
こうしてみると、本当に凄いコトだと感心してしまう。
寧ろ、拘りというよりも執着と言った方が、合っているかもしれない。
一体何が、忍足くんをそこまで駆り立てるのか。
そして、ふと思う。
ココまで徹底していると、人生までをも生き急いでしまうのではないか、と。
それはつまり、忍足くんは儚げな人。というコトになるのだろうか。
何だか対極にある様で、隣合わせにあるという新事実。
とても、奥が深い。
忍足くんを見ていると、とても儚げには見えないけれど。
でも、あっという間にすべきコトを遣り遂げて。悔いは無い、とか口にしそうな気もする。
そんな結論に達してしまい、私は忍足くんを見掛ける度。
はらはらして仕様が無い。







『第一印象』(白石編)



彼を評する言葉は、ミスターパーフェクト。
恐らく、コレだと思う。
そうは言っても、パッと見てスグにそんなコトは解らない。
だから完璧な人だと解るのは、ある程度の時間が経って、人となりを知ってからとなる。
なのでコレは、後付けになるのかもしれない。
そう考えると、白石くんを見て最初に思うのは、カッコイイ人とか、イケメン。
というモノかもしれない。
確かに白石くんは、顔が良い。モテそうな顔をしていると思うし。
整っているというか、キレイだ。そして髪なんかも、キラキラして輝いている。
よく絵本などに出てくる、王子様のような感じに似ているかもしれない。
顔も良いし、頭も良い、運動神経も良くて尚且つ親切。
もう、文句の付け所がない。
唯、毒草の知識が豊富で。
一度話しだすと、なかなか止まらない所が微妙というか。
全く解らない人間からしてみると、どう対応して良いのか解らない。
まあでも、白石くんならそれすらもチャームポイントの一つになってしまうのかもしれない。
何をしても絵になるのだから、美形というのはお得だ。
そんな白石くんを初めて見た時、今では特徴の一つにもなっている左手の包帯。
アレは、無かったと思う。
左手に包帯が巻かれる様になったのは、三年になってからのコトだった筈。
何でも聞く所によると、後輩に言うコトを聞かせる為らしい。
それだけ聞くと、包帯なんかでどうやって?と、何のコトだかサッパリ意味が解らない。
けれど、白石くんは無駄のない完璧人間な訳で。
だからあの包帯も、重要な意味のあるモノなのだろうし。
後輩も言うコトを聞いてしまう様な、何かがあるのだろう。
兎に角。
ある日突然、何の前触れも無く白石くんの左手には、包帯が巻かれる様になった。
それからというもの、私はその包帯にばかり目が行ってしまう。
顔よりもまず、包帯に目が釘付け。
寧ろ、白石くん=包帯。
今では、そんな公式が出来上っている始末。
包帯が無い期間の方が、ずっと長くてそっちの方を毎日見掛けていた筈なのに。
それ程までに、包帯のインパクトが大きいというコトなのか。
だから恐らく、左手の包帯が外れる日がくるまで。
ミスターパーフェクトで、王子様な筈の白石くんは。
私の中では、残念ながら包帯の人でしかない。
ホントに申し訳無さすぎて、本人には絶対に言えないし、知られる訳にはいかないけれど。