些細な重大事項1
七原篇



手紙を貰った。
それは何てコトのない、俗にラブレターと呼ばれるモノで。
こういった物を貰うのは、初めてじゃなかったし。
今までも何度か受け取ったコトはあった。
唯、今回貰ったソレは。
慶時を経由して、俺の手元へと届いた。


「渡してくれって、頼まれたから。」


何事も無かったように、慶時は笑みを浮かべて俺に手紙を差し出した。
言葉と共に差し出されたソレを
ありがとう、態々ごめんと言って慶時から受け取った。
でも俺の胸中は、正直複雑だった。

その光景を目にしたのは、本当に偶然だった。
慶時の姿を見付け、声を掛けようとして、慶時以外に誰かと一緒に居るコトに気が付き。
それは、俺の居た場所からは背を向ける形になっていたから。
顔までは解らず。女生徒の誰か、というコトしか解らなかった。
ぽつりぽつり、途切れながら耳に届く声。
そうして突然、その子が慶時の頬を引っ叩いた。
目の前で起こった出来事に。
何が起こったのか、一瞬解らず。
次いで怒りのような、哀しみのような。
そんな感情に襲われた。
兎に角ショックで、呆然とその場に立ち尽くすコトしか出来無かった。

俺が、その時起きたコトを見ていたなんて、きっと慶時は知らない。
それに慶時の性格からして、自分の身に起きた出来事を俺に言うコトなんてしない。
特に良い出来事ではないのだから、余計だ。
正直言って俺は、第三者の手を経て渡されたりするコトに。あまり好感が持てない。
今回のみたいに、慶時の手を経て来る物は特に。
慶時に渡せば俺が受け取ると、打算していたりするのが見て取れる。
それが嫌だった。
そんなコトをしなくとも、俺は面と向かって渡されたら特別なコトが無い限り受け取り拒否をするようなコトはしないのに。
以前、止めて欲しいと。
慶時に頼んで、俺へ渡すのとか止めて欲しいみたいな言葉を口にしたコトがあった。
別段慶時が、そういう行為が迷惑だから。
俺から止めるように言ってくれとか、そういうコト言ったわけではないのに。
ケチだとか酷いとか。蔭で慶時のコトを、悪く言われているのを耳にしてしまった。
その時も、物凄くショックだった。
結果として、俺の所為で慶時が悪く言われるコトになって。
ショックで悔しくて、哀しかった。
あの時感じたモノを、こうして再び味わうコトになるなんて。
皆が皆、こんな風だとは思わないけれど。
でも、こういう人達に自分が好かれているのかと思うと。
自分自身が、憎らしく思える。