見上げた空は、気持ちとは裏腹に、煌々とした月が輝く。 雨が降ればいい。そうして、何もかも全て流してくれれば良いのに…。 『寂しい葬儀』 意識を失い、次に目を覚ました時、ソレは既に始まっていた。 淡々と、静に知らされる自分達の行く末。 即ち、死ぬまでの期日。 どうするコトも出来ない現実。変えるコトの出来ない未来。 知らされた瞬間、特に感じるモノは無かった。 冷静に、ソレを受け止めていたのか。 或は、何も考えられないほどだったのか。 実際の所は、解らない。 けれど、目の前でクラスメイトが殺されて。 溢れ出す鮮血。 床に広がる紅い水溜り。 そうして室内に漂う、血の臭い。 否応無しに、受け入れざるを得ない状況になって。 そうして始めて、嗚呼コレは紛れも無い現実での出来事なんだな。 あんなに簡単に、人は死ぬんだなって。 頭で解っていても、実感して、理解出来たのは、この瞬間(とき)になってからだったような気がする。 死、なんてのは、いつか必ず、誰にでも起き得るモノなのに。 哀しむ間も、脳が感情を伝達する前に、次はお前が死んだ。 何も出来ずに、只、呆然と見つめるコトしか出来なかった。黙って、見つめるしか出来ないコトが。 こんなにも。こんなにも虚しく、痛く辛い哀しいモノなんだって。 思い知らされた。 だけどそんな俺に、お前は微笑(えみ)を向けた。 ふっと動かされた視線が重なった瞬間。 確かに、微笑(わら)った。 でも。 崩れ落ちていく姿を見つめるコトしか出来なくて。 本当は駆けよって、この手に抱き止めたかった。 引き寄せて、抱き締めて。 その温もりを感じて、もう一度、キスしたかった。 * 次第に減っていく室内で。 静に、床に横たわる、動かないお前の姿を見つめながら。 ずっと、あの微笑みの意味を考えていた。 だけどきっと、真意の程は解らない。 もう、確認するコトすら出来ないから、推測でしかない。 いくら考えても、考えても考えても導き出されない答え。 でも俺は、答えが欲しいわけじゃない。 応えが欲しかった。 そうして己の名前を呼ばれ、投げ付けるようにカバンを渡され。 薄暗い教室を出る時、俺には只、見送るコトしか出来なかった。 本当は、あの冷たい場所から連れ出してやりたかった。 そんなコトは、到底叶わぬコトだと解っていたけれど。 出て来たばかりの建物を振り返り、見上げる。 頭を過るのは、数時間前の光景。 実感が無いから、湧かないから哀しいとは思わない。 だから、涙も出てこなかった。 在るのは只、どうしようもない喪失感。 弔いの花など、ココに在りはしない。 立ち止まるコトも、哀しみに打ち拉がれるコトも許されない。 引き返すコトも出来ない今、無理だと、無謀だと思われても進むしかない。 無惨に殺されて逝った、クラスメイトの為。 否。 お前の為に―――。 大きな弔いの華を、俺自身の手で咲かせてやろう。 心に誓い、真っ暗な道へと一歩を踏み出した。 fin.
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最果てより