NO.1 【昔の恥】 (国信+豊) |
「幼馴染みって、たま〜に嫌な所もあるよね。」 「例えば?」 「うーん…。例えば、自分が抹消して欲しいような過去の記憶とか覚えてて、 それをネタにされた時とか。」 「そんなコトあったの?」 「え?……微妙?」 「ふーん…。瀬戸が三村の頭から消えて欲しい、記憶ってどんなコト?」 「ええッ?!…ノーコメント、…ってのはダメ?」 「はは、別に言いたくないなら良いよ。」 「じゃあ秘密。あ、でも直接シンジに聞く。とかゆーのはナシだからね!!」 「解ってるよ。」 「ノブさんはそーゆうの無いの?」 「俺?うーん、どうだろう。 秋也は結構、昔のコトとかあんまり覚えてないっぽい所があるからなぁ…。」 「ふうん、まあシューヤらしいといえばシューヤらしいけど。なら逆は?」 「逆?」 「うん、シューヤが人に知られたくないようなコトとか。」 「そうだなぁ…。まあ、それなりに、ね。でも一応、秋也の名誉の為黙っとくよ。」 「ええ〜、そーゆわれると気になる!!誰にも言わないから、こっそり教えてよ。」 「うーん?瀬戸が話してくれるなら、考えても良いよ?」 「うえー…、ズルイよそんなの!!」 「俺だけ言ったら、フェアじゃないしね?」 「う〜…。あッ!!」 「何?」 「じゃあさ、じゃあさ。シンジの昔話するから、変わりに教えてよ!!」 「…親友を売るの?」 「うん!!」 「そんなハッキリ言われても…。けど別に、そんなに興味無いしなぁ。」 「ええッ?!でもでも、恋人の過去とか気にならないの、ノブさんは!!」 「否、そんな大袈裟な…。っていうか大体、三村の昔とか想像つくしね。 それにほら、ある意味今現在も充分恥じ晒してる所あるし。」 「ああ、それもそーだねぇ。」 「うん。」 「ちぇ〜、良いアイディアだと思ったのになー。しょうがないからシューヤの昔話は諦めるか。」 ほのぼの系。 |
NO.2 【仲良しだと言われて】 (七原) |
いろんな人に 『仲が良いね。』 そう言われたら、確かにその通りだし、間違いじゃない。 だけど。 だけど、俺は―――。 慶時の真実(ほんとう)の部分は、何も知らないと思う。 え、何コレ??みたいな…。 |
NO.3 【分かり辛い感情表現】 (国信+三村) |
「そうゆう表情(かお)してると、何考えてるのか全然解らないな。」 「…何、急に?」 「別に、思ったから。」 「ふうん…。でも、こうしろって言ったのは三村だろ?」 「まあ、そうだけどさ。」 「けど?」 「解らない、伝わらないってのは、なんか寂しいと言うか切ないと言うか。」 「じゃあ、もっとベタベタしろ、と?」 「否、それも少し違うから。」 「感情が伴って無いなら、意味無いもんね。」 「はは…。キツイな、それ。」 「……でも、俺が一番知られたくなかったモノに気付いたんだから。 他のコトだって、その内簡単に見抜かれるようになるのかもしれないね。」 「ん、何か言ったか?」 「ううん、何も?」 「そうか?」 「うん。」 解らないようにしているのは、やはり何も感じていないからなのかもしれない。 だけど、コレ以上知られて、今以上に自分なんかのコトで、悩んだりして欲しくない。 そうゆう想いがあるからかもしれない。 ホントはあの日、口にしてくれた言葉で、充分自分は満足だったし、嬉しかった。 だから、その以上を望んだら、罰が当るような気がする。 それくらい、思っている。 いつか、お互いの道が別たれ、別々の道を歩む日が来るかもしれない。 かけがえのない、特別な女性(ひと)と巡り合う日が訪れるかもしれない。 自分のコトが、邪魔だと、煩わしいと思う日が来るかもしれない。 それは、一向に構わない。 只、必要としてくれている限りは、離れたり、ましてや裏切るような真似は決してしない。 必要で無くなる日が来たならば、自分のコトなど、スパッと切り捨ててくれて構わない。 幸せだと感じ、笑顔を浮かべてくれるのであるなら。 それだけで、充分なのだ。 でも、こんな風に自分が思っているなんて知ったら。 優しい彼は、そんなコトが出来なくなってしまうだろうから。 泣きそうな、辛そうな表情(かお)をするであろうコトが容易に想像できる。 自分はそんな表情(かお)をさせたいわけでもないいし、ましてや望んでいるわけでもない。 だから絶対に、伝わるようなコトをしてはいけない。 何も言わず、無関心を装っている自分は、卑怯なのかもしれない。 もしかすると只、逃げているだけなのかもしれない。 それでも「ごめん。」と、謝罪の言葉は口にしたくはない。 寧ろ「ありがとう。」と、感謝の言葉を口にしたいから。 自分が今、こうして抱いている感情が、恋だの愛というようなモノで無かったとしても。 その日が来るまで。 傍に居て、黙って笑うコトしか、俺には出来ない。 満足して、充分嬉しいと感じているコト。感謝の想いだけが伝わってくれれば良い。 それ以外のコトは、知らないままで、解らなくて構わない。 黙して語らずにいるけれど、心の底から本当はそう想い願っている。 こうしろ、というのは。「無理して、楽しくも何とも思ってないのに笑うな。」ってコトです。 |
NO.4 【大喧嘩】 (豊+七原) |
「素朴な疑問だけど、三村と喧嘩するコトとかある?」 「喧嘩ー?…あんま無いかなあ。 なんだかんだ言っても、滅多に怒ったりしないんだよねシンジ。 そーゆうシューヤこそどうなの?」 「俺?」 「ノブさんの怒った所って、想像つかないし。」 「慶時も怒ンないなー…。慶時が大事にしてたモノをウッカリ壊しちゃった時も 『わざとじゃないんだから。』って許してくれたし。」 「昔から変わらないんだね。なんか悟りを開いた人とかみたいだよね。」 「けどさー、逆の立場だったら絶対怒るだろ?」 「うん、多分ね…。」 「何しても全然怒ンないし、子供心に…って今もそうだけど。 兎に角、それが気にいらないっていうか、許せなかったっていうかさ。」 「うん。なんとなく解る気がする…。」 「で、そういうのが嫌になって、我慢できなくなって思ったコト全部吐き出したコトがあって。」 「うん。」 「俺一人で騒いで怒って、慶時のコト困らせて…。 別に慶時はちっとも悪くないし、只の八つ当り以外の何物でもないって解ってるけど。」 「それで?」 「何言っても仕方ないって思うのか、困ったような苦笑浮かべて、何も言わずに俺の傍から離れて行って。 けど、そしたら急に寂しくなって、こんな勝手なコト言って嫌われたかもしれない。 そんな風に思えてきて不安になって。 ……泣きながら謝りに行った。」 「…俺もそんな感じでさ。『もう良いよ!!』ってなっちゃっうんだよね。 シンジは悪かったってスグ謝ってくれるんだけど。 頭にきて、血が上ってる時って何言われても許せなくて、癇に障るんだよね。」 「…うん。」 「だから、謝られても無視して、口も聞かない状態になっちゃってさ。 そうなると、逆に今度は意地になるんだよね。で、謝るタイミングが掴めなくなってさ…。」 「その後どうなるんだ?」 「んー…。暫く経った頃、いつもと変わらない感じで普通にシンジが話し掛けてきて終わり。みたいな感じかな? 結局、謝ンないんだから、俺って結構卑怯なのかもしれない。」 「そっか…。」 「うん。」 「「……。」」 「なんて言うか、二人共大人だよね。」 「ああ。」 「逆に、俺達って凄い子供だよね。」 「そう、だな…。」 「「……。」」 「でも、コレで良いンだよね…?」 「…多分。」 「この感じが、お互いベストなんだから。」 「このままでいるのが、一番だよな。」 幼馴染み’S同士の大喧嘩って、あんま想像がつかないんですよね…。 |
NO.5 【だから違うって】 (七原+三村) |
「あのさ、ちょっと聞いてみたかったコトがあるんだけど…。」 「なんだよ、改まって。」 「うん、あのさー…。三村は慶時の何処を好きになったの?」 「…は?」 「だから!!慶時の何処が好きになったのかって聞いてるの!!!」 「何だよ、急に。」 「だって気になるじゃん。あんなにいろんな女の子達を、フラフラしてた三村がさ。」 「……それを言われると、痛いな…。」 「だからさ、今までの相手とは何か違った魅力みたいなモノを感じたわけだろ?」 「魅力って…。まあ、否定はしないけど。」 「だろ?!だからさー、何処?」 「何処って突然聞かれてもなぁ…。」 「何、言い難いコトなの?じゃあ、慶時には黙っておくから!!」 「否、別にそうゆうわけじゃ無いけどな。」 「うーん……。あッ、もしかして!!!!!」 「今度は何だよ?」 「もしかして三村…。」 「ああ?」 「慶時の身体が目当てなんじゃあッ!!!!!」 「ッ?!アホか、違う!!!」 「だって、言い難いコトなんて、そのくらいしか…。」 「だから、言い難いコトとか、そうゆう問題じゃ無いって言ってるだろ?」 「そうか、そうだったんだ…。」 「って、オイ。人の話しを聞けよ、七原ッ!!!」 「うわーん!!!俺の慶時が三村に汚されるッ!!!!!」 「なッ?!俺のって、どうゆう意味だよ!!…じゃなくてッ!!! だから違うって言ってるだろ!?ホントに人の話しを聞け!!!つか、いい加減にしろよッ!!!!!」 この後、七原は慶時さんの所へ泣きつきに行きます。で、コトの顛末をばらされると。 |
NO.6 【幼い手】 (国信) |
何かに縋り付きたかった。 必死に手を差し伸べていた。 そんな時もあった。 けど、何もかもが無駄だと知ったその時から。 自ら何かを望むようなコトも、積極的に他人(ひと)に関わるようなコトもしなくなった。 そんな自分が、初めて手を差し伸べられたのは5歳頃のコトだったか。 慈恵館に連れて来られた時。 どんなに手を差し伸べても、握り返されるコトがなかったあの頃。 自分へ向けられた手を、どうすれば良いのか解らなかった。 そんな自分に、無言で手を握り、微笑みかけてくれた。 でも 『暖かい』 それ以上の感情は、何も沸いてこなかった。 ずっと、ずっと欲していたモノの筈なのに。 慈恵館には、自分と似たような子が多かった。 けれど。 あの頃の自分は、全てを拒絶していた。 だからある意味、引き取られてから暫くした頃の方が、悲惨な物だったのかもしれない。 今だって、何もかもを受け入れたわけではない。 思考は昔と変わらずにいるし。 やはり、どう足掻いても自分自身のコトが好きになれない。 だから、自分を大切にしようとも思わない。 人間は己自身が一番大切だと言うけれど、自分にはそれが当て嵌まらない。 かと言って、自分以外の他人が一番というわけでもない。 優しくしてくれる人間は、数多くいるけれど、 それでもやはり自分にとっては、その他大勢でしかない。 自身のコトが、どうでも良いように、周りの人間も同義なのだ。 こんな風にしか生きるコトが出来ない自分を、一般的に『可哀想』と称するのだろうか。 考えても、所詮答えが出るわけでもない。 だから、幼いあの日。 必死に欲していたモノは、一生この手に掴むコトは出来ないのかもしれない。 何だろう、コレは?最初に考えていた物と全く違う話しになってしまった…?? |
NO.7 【色恋話】 (豊+三村) |
久し振りに訪れた親友の部屋で、珍しいモノを見付けた。 「どうしたの、コレ?」 あまりにも似つかわしいソレに、思わず言葉が零れた。 「ん?あー…、国信が忘れて行ったんだ。」 「ノブさんが?」 返ってきた答えに納得し、手に取ったその厚めの本は、中もびっちりと文字が埋め尽くされていた。 本を読むコトは嫌いじゃないけれど、さすがに少し頭痛を覚えそうだった。 「シンジも読むの?」 「んなわけないだろ。」 「だよね。」 国語が苦手なこの親友が、自ら好んで読むとは到底思えなかったけれど。 二人は付き合ってるわけだし、相手の好きなモノは気になるんじゃないかな?とか。 案外、その影響で嗜好が変わるかもしれない。そんな風に思ったりもするわけで。 でもまあ、苦手なモノがそう簡単に好きになるようなコトは無いだろうけど。 けど、ノブさんの本があるってのは、部屋に入ったコトがあるんだよね。 否、別に普通に他の友人達もあるわけだし、おかしなコトは微塵もないんだけど。 なんとなく、二人っきりっていうのが想像つかないっていうか。 話しを聞いた時、吃驚したけど。それと同時に以外だな、とも思った。 悪い意味じゃないけど、なんか過去のシンジの遍歴っていうの? ソレを考えると、ちょっとね。 「あのさ、ノブさんと二人で居る時とか、どんな話しするの?」 「は?」 「どんなコトしてるの?」 「何だよ、急に。」 「んー、なんか気になるんだよね。シンジとノブさんが二人っきりってのが想像つかない感じがするっていうか。」 嘘は言ってない。真実半分、興味半分だけど。 「あと、シンジ手が早いって有名だけど、ノブさんにももう手出しちゃったの?」 「ッ?!お前、何言って…。」 いつも憎らしいくらい飄々としているこの親友が、僅かに動揺を見せた。 二人が付き合うようになってから、結構時間が経過している。 即日手を出すコトなども稀では無い親友。 この反応は、どうとるべきか…。 「まだなの?」 「…あのな、豊。」 「何?」 「ホントに、なんだって急にそんなコト聞いてくんだよ。それに、手出しちゃったのってなぁ…。」 話しを濁すような言葉に、実は本命には中々手を出すコトは出来ないのだろうか。 などという思いが頭を過る。 「え、まだなの?」 「否、違うけど…。ってそうじゃなくてッ!!!」 「うん?」 「あのなー…、だからどうしてそんな話しになるんだよ。」 返された言葉に、ああそういう意味か。確かに脈略もなく、突拍子もなかったわけだし。 早々、こういった話しはしないからな。と納得する。 しかしなんとなく、単なる好奇心からとは言い難い雰囲気が漂っている。 どうしたモノかな、暫し思案する。 ああ、そういえば。この際だし、あの話しをしてみようか? 「最近、好きな人っていうか、気になる人っていうかができてさ。その所為?」 「疑問系かよ…。まあ良いけど。で、誰だよ?」 「……イイジマケータ。」 「飯島かー…、って飯島ッ?!」 「うん。」 「飯島かぁ…、飯島なー……。まあ、顔は良いからな、アイツ。」 「うん、顔だけは良いよね。」 さり気なく酷いコトを言ってるような気がしなくも無い。 けどまあ、事実だし細かいコトは気にしない。はっきり自分も肯定してるわけだし。 「…こう言っちゃなんだが、何処が良いんだ?」 「うーん…、なんて言うか最近特に弄られキャラって感じじゃん?」 「…。」 そう言った俺に、シンジは無言で視線をさ迷わせた。 というか、筆頭になってるのが本人なわけだし。無言は肯定というコトだろう。 そのコトに関して、とやかく言う気も無いし。 「で、そんな時のケータの表情とかがさー。心を燻られるっていうか、気になるって言うか…。」 うん、そうなのだ。 そこが良いとか思ってるんだから、俺が止める筋合いも無い。……と思う。 俺って結構、捻くれてるのかな? 「……お前、やっぱ俺の親友だな。」 「そう?」 何処となく、遠くを見つめたままシンジが呟いた。 それはどういう意味なのかな? とか思ったけど、敢えて追求するのは止めておいた。 その後、なんとなくこの話しを続け難い空気になった為。 特に進展するようなコトもなかった。 別段、お付き合いをしたいとか、そういったわけでもなかったし。 良いか、と思った。 が、一つ。 シンジがノブさんと一緒に居る時、どんな会話とかしてるのか聞きそびれたコトは少々心残りだった。 次は、シンジじゃなくてノブさんに聞いてみようかと思う。 自分で書いておいてなんですが、どうにも中途半端な話しだな…。 |
NO.8 【ずっと、知らなかった】 (七原) |
小さい頃からずっと一緒に育って。 親友であり、家族同様でもあり、そして誰より大切な人。 だけど、慶時自身のコトを、俺は殆ど知らない。 慶時と初めて会ったのは、両親が死んで慈恵館にきてスグのコトだったと思う。 けど、初めて会った日のコトとか、話した日、仲良くなったきっかけとか。 そういったコトは、全部あまりよく覚えていなかったりする。 だから前に、さりげなく聞いてみたけど、慶時は笑うだけで何も教えてはくれなかった。 慶時は、自分自身のコトを話すような人間じゃないから。聞くだけ無駄かな、とは思ってたけど。 でも、そうなると、やはり気になるのは事実で。 かと言って、誰かに聞くコトもできないし。 ちょっと、自分の記憶力の悪さを呪いたい気持ちになったりもした。 正直、俺は鈍い人間だと思う。 だから、言葉にして、態度にしてくれなきゃ解らないし気付けない。 『仲が良いね。』 とか、言われたら実際その通りだし、嬉しい。 慶時の笑顔は大好きだし、笑ってくれてたら、それだけで俺も嬉しくなる。 けれど内側にあるモノ、慶時が何を考えて思ってるのか。 俺には何一つ解らない。 解らない、知らない。無知と言うのは怠慢なコトだという。 だけど、俺にはどうして良いのか解らない。 知らないと言えば、慶時が三村と付き合うようになったという事実も、最近まで知らなかった。 俺が解らない、知らない慶時のコトを、三村は知っているのだろうか? ふと、そんな風に思うと、なんだか寂しいような切ない気持ちになる。 俺じゃあ、ダメなのかなって。 でも同時に、慶時のコトを、本当に解ってくれる人間が出来たのであれば嬉しいとも思う。 複雑な想いが、心の中で交錯しているけど。 最終的に行きつくのは、慶時が笑ってくれていれば良い。幸せだと感じてくれてるなら良い。 慶時が、そう想ってくれてるみたいに。 だから俺は、それに応えるよう、いつでも笑顔であり続けたいと思う。 それが、唯一俺にできる最上のコトだから。 なんか微妙だけども…。ちゃんと二人は親友なんですよ、清い(笑) |
NO.9 【親】 (国信+豊+七原+三村) |
「あんまりよく覚えてないけど。二人共、大好きだったよ。」 「憎んだり恨んだり、嫌ってもいない。親は親でしかない。」 「普通に、二人共好きだよ。」 「嫌いってわけじゃないけど…。好い印象は持って無い。」 七原、国信、瀬戸、三村の順です。(2004.2.22) |
NO.10 【僕しかしらない裏の顔】 (豊) |
本当はね、誰よりも努力家で負けず嫌いなんだよ。 只、そういう部分を人に見せるような人間じゃないから。 なんでもない風にして、物事スマートにこなしてるように見えるけど。 人一倍、影で努力しる人間なんだ。 まあ態度には、微塵も出さない器用な所があるから、解らない人達にはムカツク奴だ。とか。 生意気だとか、目障り。なんて風に思われちゃったりする。 そういうの、凄く頭にくるし、陰口しか吐けないようなお前等と一緒にするなっていつも思う。 そんな暇あったら、もっと努力して、見返してやる。くらい思えよって。 そこがシンジと、お前等を隔てる境界線なんだよって。 大きな声で、言ってやりたい。 でもシンジは優しいからさ、何も言い返したり、荒立てるようなコトもしないし、皆受け流してる。 凄いなって思う。 器が大きいっていうか、人間が出来てるっていうか。 けど反面、気にしてるんじゃないかなとも思う。 こんなコトを言われて、傷付かない人間なんて居るわけがない。 だって生きてるんだよ?心があるんだよ? だからさ、吐き出さずにため込んでるシンジが心配に思える時がある。 ずっと、そんな風に思ってたけど。 最近、少しずつだけど、変化したように思える。 理由は、やっぱりあのクラスメイトだろう。 始め聞いた時は驚いたけど。でも、嬉しそうに笑うシンジの顔見たら、良かったね。って、心の底から思った。 あんな風に笑うシンジの顔は、本当に久し振りだったから。 幼馴染みで、長年一緒に居た俺に対してさえ、そう易々と見せなくなった本心を。 中学から知り合って、ほんの数年、短時間の内に引き出させてしまった彼を凄いと思う。 反面、少し。ほんの少〜しだけど。 悔しいなあって思うのも、俺の本音。 幼馴染みで、親友というポジションは、今も昔も変化はないけれど。 複雑な思いがあるコトも否めない。 でも。 そんな大事な親友が、例えばそれは弱音だったり。ため込めている何かだったり。 本当の自分を、飾らずに曝け出せる人間(ひと)が出来たという紛れも無い真実は。 ホントに、素直に良かったと思う。 今まで、俺しか知らなかったであろう親友の裏の顔。 きっとノブさんは、既に知ってるんだろうなぁ…。 だけど、親友や友人達が。 皆、笑顔を絶やさずにいてくれるのならば。 コレ以上幸せなコトなど、他には何も無いと思う。 こんな親友が居たら良いなぁ…。この二人も親友です、清い(クドイから!/笑) |
NO.11 【昔からこいつは、】 (三村) |
「―…さんて、なんか良いよね。」 豊が、そう零した相手から告白された。 誰かを好きになるコトは、理屈ではないけれど。 よりによって豊が、あんな風に言った人間に限って、どうして俺なんかのコトを好きになったりするんだろう。 何より先に、そんな思いが頭を過った。 その事実を知っても 「相手が幸せなら、笑ってくれてるなら俺は別に良いんだ。」 笑って豊は呟いた。 どうしてお前はそうなんだ。そう言いたかった。 でも、言えなかった。 否、口にしたらいけない。 俺が、とやかく言えるコトではないと。 そう思ったから。 *** それ程遠くない昔、豊の口から聞いた言葉。 久し振りに、同じ言葉を聞いた。 自己犠牲、というのとは少し違うけど。 それでももう少し、自分自身のコトを考えても良いのではないか。 正直、それが俺の感想だ。 確かに、自分が想っている相手が、違う誰かに想いを寄せていたなら。 取るべき行動は、二つに一つだと思う。 自分のコトを、相手に好きになってもらうよう想い続けるか。 もう一つは、潔く相手のコトを諦め手を引くか。 この二つしか無いと思う。 だけど。 後者を選んだとして、そう簡単に絶ち切るコトが出来るのだろうか? ましてや笑って、そんな風に言えるのだろうか? 俺には出来ない。 なんとも思っていない相手ならば、いくらでも絶ち切るコトは出来る。 けれど本気の相手に対しては違う。 出来るわけがない。 それを知ったのは、つい最近のコト。 拒絶の言葉を投げつけられても尚、俺にはすっぱりと想いを絶ち切るコトなど出来はしなかった。 それをあんな風に言い切れてしまう豊は、よっぽど人間が出来ているのか…。 でも、豊の言葉には、嘘も偽りも無いと。紛れも無い本心だとも思う。 何故こんなに良い、コレ以上無いほど出来た幼馴染で親友を。 周りの人間達は気付かないのだろう、解らないのだろう。 なんて人間(ひと)を見る目がないのだろう。 俺なんかよりも、ずっと、何倍もいい男なのに。 *** 俺の心を余所に、豊は今日も笑う。 裏表、嘘偽りの無い笑顔で。 けど、もっと。我侭を言っても、欲しがっても良いと思う。 否、寧ろそうすべきだ。 でも。 今のままで充分だって、お前は言うんだろうな。 解っているから、俺は結局何も言えない。こうして、幾度となく言葉を呑み込む。 知ってるか? その度に俺が……。 俺が、何一つ出来はしないのだと思い知らされるのを。 けどこんなのは、只の独り善がりでしかないから。 知らなくて、解らなくて、気付かなくて良いコトだけど。 最近、よく思うコトがある。 似てるよな。 お前も、アイツも。 自分自身が一番じゃない所がさ。 何も出来ずに、傍に居るコトしか出来ないもどかしさ。 俺は、何一つ言えずに、ただ笑顔を返すコトしか出来ない。 久し振りに呟いた豊さんの対象者は飯島です。(なんかうちは飯豊推奨サイトらしいので(えッ、確定なのかよ?!)) |
幼馴染みに11のお題